如月トキヤの、世界に報いるニートの叫び

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映画「ダンケルク」の感想

 

個人的に2017年最も期待していた映画であるダンケルク。公開初日に観てきた。

ウケるのもわかるし、楽しめない人がいるのも納得できる。

これから観る人はできるだけデカいスクリーンを選ぶのがお勧め。

 

話題作、名作が目白押しだった昨年2016年の後だからか、どうもラインナップのショボさが際立つ2017年の映画。

僕が映画番付を作ったとしたら、現時点で今年は横綱不在の貧弱な番付表になる気がする。

 

そんななかにあって、今年の横綱映画候補になると期待していたのが、「ダンケルク」。

「ダークナイト」や「インセプション」のクリストファー・ノーランが監督ということで、これは「面白い」だろうと。(「ダークナイト・ライジング」は映画館で寝たけど)

映画玄人ではない僕の耳にも入ってくる監督の最新作ということで期待していた。

 

そんなミーハーな気持ちで観に行った「ダンケルク」は、決して「面白い」映画ではなかった。が、新鮮で、スリルに満ちた良い映画だった。

 

あらすじ

第二次大戦中、イギリス、フランス連合軍はドイツ軍によりフランス北部沿岸の町ダンケルクに追いつめられる。その数およそ40万人。絶体絶命の状況で、人類史上稀に見る救出作戦が行われる。果たして彼らは生きて祖国に戻ることができるのか!?

 

体験 > 物語

いや、「生還できるのか!?」とか煽っても、映画だし、なんならノンフィクションだしそりゃまあできますわ。これはネタバレとかじゃなく。

ストーリー的な驚きとか感動は最初っから意識してない印象を受けた。

実際、史実をそのまま無難に一本の物語にしてまとめようとしたら最大の盛り上がりになるであろうシーンもあっさりしてたし。

 

じゃあ何が見どころなのかっていうと、「疑似的な戦争体験」ってとこなのかな。

「戦争を体験する」っていうのは実際に戦場に足を踏み入れていない人間としてあまりにおこがましいし、リアルを知らない分際で「めっちゃリアルだった!!」とか軽々しいことは言いたくない。

でも劇場の非日常的な大きさのスクリーンと轟音の中で、幸運なことに戦争というものに対して未知の人が、その恐ろしさの一端でも疑似的に体験できる映画だとは思う。

突然鋭い銃声が鳴り響いて周りにいた仲間が倒れだす、みたいなのって想像はできても実際に映像として見るとやっぱり衝撃的なんだよね。

 

この映画は三つの視点で展開されるんだけど、なかでもメインの青年兵士の視点は印象的。彼はただ戦中で徴兵されたから来ましたよと言う雰囲気で、現代の日本に生まれてれば大学で少ない友人と食堂でだべった後でドトールとかでバイトしてそうな弱々しい若者。

そんな普通の気弱でドトールっぽい若者が殺し合いに参加させられるっていうことがどういうことなのかを再現してみせたのがこの映画の大きな魅力だと感じた。

 

末端兵士の思い

追いつめられた兵士たちは海岸でなすすべなく救助を待つことになる。彼らは砲撃がきてもその場で身を低くしてやり過ごすしかない。その時思うのは、とにかく「自分の方には来ないでくれ」、「早く砲撃が終わってくれ」ってことだけだろうなと。

実際、ドイツ軍の戦闘機が迫ってくる時に聞こえる音があって、それが聞こえるとこっちまで「うわ、やばいやばい」と体が強張ってしまう。

ドトール君もただ行き当たりばったりで生き残れそうな方に向かうだけで、物語の主人公とは到底言えないような頼りなさだった。本当単なる視点としての機能しか持たず、物語を前に進める力を脚本から全くと言っていいほど与えられていない。

そんな彼の視点から、先の状況が全く分からないなかでただ翻弄される末端兵士の気持ちを疑似体験していると、僕も「うわあ帰りてぇなあ」と思わないわけにはいかなかった。

 

 

監督クリストファー・ノーランについて

正直そこまで作品を見ているわけではないけど、確かにこれまでも、ほとんど常に緊迫感が張り詰めているような映画が多いように感じる。

「ダークナイト」のジョーカーなんて、「殺すんだろ? どうせ殺すんだろ? なら早くやってくれよ!」っていうちょっと叫び出したいくらいの怖さと緊張感があった。

(「ダークナイト・ライジング」は途中で寝たから知らん。)

そういう意味では、よりリアル寄りの戦争映画で、史実が基になっているという前情報がなければ耐えられなかったかもしれない。

 

あと、割と過激主義というか拘りの強い人だということ。本当か知らないけどネット嫌いでメールすら使わないとか。

あとはCGをあまり使わず実写に拘ることとか。ダークナイトのメイキングで実際に大型トレーラーを前転させているのを見てすげえとおもったのを覚えている。

実写で撮るのとCGで説得力ある映像を作るのとでどっちのがコストかかるのかはよくわからんけど、戦争映画でCGを極力使わず撮るってのは意味のあることだよね。そのせいか大作映画にしてはエンドロールが短かった気がする。

 

戦争映画について

戦争映画は英雄の物語になりがちだ。

ある英雄が人並み外れた勇気で沢山の人を救いましたとか、あるいは沢山殺しました。になるのが一般的な戦争映画じゃないかな。

でも「ダンケルク」はそういった意味では「英雄不在の戦争映画」かもしれない。

確かにそれらしき人はいたけど、明らかにヒーローを讃えることには重きを置いていなかった。

それに「撤退」の話ってのも大きい。

昨年公開の「この世界の片隅に」は新鮮な戦争映画でヒットもしてたけど、僕らは最近になって戦争に対する視点を多様化させてきてるのかもしれない。

こういうエンタメと世相の関係について年代毎に研究してみたら面白そうだよね。

 

あと、残酷な描写がびっくりするほどない。記憶にある限りで一度も血を見ていないはず。逆にグロくなくてもこんなに怖いんだってびっくりする。この辺も「リアルだった!」とか言いたくない理由の一つ。

これも戦争映画としては異色かもね。

 

まとめ(まとまらない)

そういや宣伝でも「映像体験」だとか「体験」っていうワードを押してたけど、そういうことかと。観てみて納得。

(これまで映画の宣伝ってひょっとしたらAIがやってるんじゃねえかとか思ってたけど、これくらいのクラスになるとちゃんとコピーライターとかが頭ひねってるのかね。)

確かに「面白い」っていうと何か違うんだよなあ。僕の貧弱なボキャブラリーだと「すごい」が限界になるのでこれも使いたくない。

映画のメッセージについても監督がインタビューとかで再三話してたけど、正直薄味。いや、この作風で説教臭いことやられたら一気に価値がなくなるからこれでいいんだけどさ。

 

最近、IMAXやらMX4Dやら映画を非日常的なアトラクションとして再定義する流れがあるけど、「ダンケルク」はその急先鋒かもしれない。現代だからこそ、映画だからこそ表現できる魅力をもった作品なのは間違いない。

 

だからこそ、映画を観るっていうことをもっと自由に考えて、「なんか新しいものを見に行く」くらいの気持ちで行くのがいいかもしれない。それこそ本来的な映画の魅力だと思うしね。

 

でも正直ハード面で没入感を削がれると何も残らないから、IMAXやらTCXやらなんでもいいけど大きいスクリーンで観るのをお勧めします。

 

おわり